アパレル・ライフスタイル業界での転職にまつわる豆知識
アパレル・ライフスタイル業界での
転職にまつわる豆知識
90年代に一斉を風靡したフランスのラグジュアリーブランドCourreges(クレージュ)。アイコニックなロゴに見覚えがあるという方も多いのではないでしょうか?90年代ファッションがここ数年のトレンドになっている流れや、インフルエンサーがヴィンテージのクレージュのアイテムをSNSに投稿したことがきっかけで、クレージュのレトロなルックスに人気が集まっています。そこで今回はCourreges(クレージュ)について見ていきます。
COURREGES(クレージュ)は、1961年にデザイナーであるアンドレ・クレージュが創立し、1964年にパンタロン・ルックやロングブーツなど発表し、続けてミニ・ルックやボディタイツなどを発表し、一躍時代の寵児となりました。1967年にはオートクチュールをシンプルにしたクチュール・フューチュールを発表しました。その後、1970年にはプレタポルテ・シリーズであるイペルボールや、オートクチュールのプロトティープなどを発表し、モードの世界に大きな衝撃を与えます。1971年には香水を発売し、1972年にミュンヘン・オリンピックの制服をデザインし、1973年にはメンズラインであるクレージュ・オムを発売し、長年の功績が認められ1987年に 「レジヨン・ドヌール勲章」を受章します。
(参照:fashion history love to know, André Courrèges, Jennifer Park, https://fashion-history.lovetoknow.com/fashion-clothing-industry/fashion-designers/andre-courreges)
創業者Andre Courreges(アンドレ・クレージュ)は1923年、フランス・ナヴァール出身。土木建築学を学ぶが、兵役についたことをきっかけに飛行学校で学び、空軍パイロットになりました。第二次世界大戦後にパリでファッションを学ぶことになり、パリ高等服飾産業学院に入学し、その後ジャンヌ・ラフォーリのメゾンでデザインを学びました。そして卒業後、「BALENCIAGA(バレンシアガ)」で経験を積み、そして1961年に自身のブランド「COURREGES(クレージュ)」を立ち上げました。
(参照:fashion history love to know, André Courrèges, Jennifer Park, https://fashion-history.lovetoknow.com/fashion-clothing-industry/fashion-designers/andre-courreges)
COURREGES(クレージュ)は、当時ファッション業界に新風を呼びこむような斬新なアイディアを発表しました。1961年アンドレ・クレージュが創設したファッション・ブランドは、技術的に革新する時代を反映した近未来志向のものや実際に着た際、優れた機能性を持った服で、モード界に新しい風を起こしたことで有名です。特に当時衝撃的だったのが、ミニスカートで、オートクチュールに初めて持ち込んだのも彼でした。建築を彷彿させるような構造的なフォルムで、膝上丈のドレスやミニスカート、ショートパンツやハーフブーツなど、今ではお馴染みのスタイルですが当時はセンセーショナルを巻き起こすものでした。
(参照:The New York Times, André Courrèges, Fashion Designer Who Redefined Couture, Dies at 92, Vanessa Friedman, Jan. 8 2016, https://www.nytimes.com/2016/01/09/business/andre-courreges-fashion-designer-who-redefined-couture-dies-at-92.html)
アンドレ・クレージュは白色が好きで、きつい対照の色を頻繁に使いました。例えば1965年当時のライフ誌には、白地に赤のストライプを施した長袖ジャケットに、紅白のストライプを描いたスカートや赤地に白襟を付け、スカートは白一色と、組み合わせに対照性を持たせているルックを掲載しています。その後も多くのコレクションで赤と白色の組み合わせ以外にも、白色と黒の組み合わせ、白色と黄色の組み合わせなどを多用しています。
(参照:The New York Times, André Courrèges, Fashion Designer Who Redefined Couture, Dies at 92, Vanessa Friedman, Jan. 8 2016, https://www.nytimes.com/2016/01/09/business/andre-courreges-fashion-designer-who-redefined-couture-dies-at-92.html)
クレージュの手がけたデザインは、当時の女性解放の役割にも一役かっており、機能性を重視したデザインで、窮屈なコルセットやハイヒールなどから女性たちを解放したのです。クレージュ自身、「ハイヒールは馬鹿げている」「ブーツはハイヒールよりも女性を解放するし、より合理的で論理的でもある」と考えていて、その合理性こそが美だと述べています。そんなクレージュのスタイルは、フランスの歌手であるフランソワーズ・アルディやイギリスの女優であるツイッギーなどに取り入れられており、多くの女性たちがクレージュを愛用しました。そのデザインは次世代のティエリー・ミュグレーやジル・サンダーなど、さまざまなデザイナーに大きな影響を与えました。
(参照:The New York Times, André Courrèges, Fashion Designer Who Redefined Couture, Dies at 92, Vanessa Friedman, Jan. 8 2016, https://www.nytimes.com/2016/01/09/business/andre-courreges-fashion-designer-who-redefined-couture-dies-at-92.html)
2020年9月、「クレージュ(COURREGES)」にニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が新アーティスティック・ディレクターに就任しました。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」で10年以上キャリアを磨いてきた彼は、一体どんな人物なのでしょうか?ニコラスがファッションデザイナーを志したきっかけは、音楽でした。ミュージックビデオを通して、ファッションへの興味が湧き、もっと知りたいと思い、首都ブリュッセルにある有名校ラ・カンブル(La Cambre)に進学します。5年をかけてファッションを専門的に学び、卒業前の08年に「バレンシアガ(BALENCIAGA)」で働くチャンスを得て、パリに移りキャリアをスタートさせます。そこでのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)との出会いが、デザイナーとしての考え方に大きな影響を与えることになりました。「バレンシアガ」と「ルイ・ヴィトン」で計10年以上ニコラの下で働いてきた彼は、「多くの時間を一緒に過ごしてきたニコラから学んだのは、細かいところにまで気を配ること。そして、好奇心を持つことだ。ニコラはこれまでの長いキャリアの中で、同じことをやったことがない。オープンな姿勢で探求し続けることの大切さを教えてもらったよ。それからメゾンの中で働く中では、我慢強くあることも重要だと学んだ」と話しています。
(参照:Vogue France, 10 things to know about Nicolas Di Felice, the new man at Courrèges, LIAM FREEMAN, 4 Mar. 2021, https://www.vogue.fr/fashion/article/nicolas-di-felice-courreges-first-collection-fall-winter-2021-2022)
十分な経験を積み、満を持してのアーティスティック・ディレクター就任となったが、ニコラスは「クレージュ」に対する思いを次のように語りました。「手掛けてみたいメゾンは数あるけれど、『クレージュ』はある意味、唯一無二の存在だ。僕はあまり装飾や複雑なものが好みではなくて、『クレージュ』はまさにシンプルで幾何学的なシェイプと色に尽きる。そして、『クレージュ』は“スペースエイジ”と共に語られることが多いけれど、ファッションの歴史を振り返ると、それは1960年代のトレンド。ブランドの本質を掘り下げると、夢を形にしたいという情熱によって生み出されたのだと思う。だから“情熱”はブランドにとっての核となる価値だ。これからは、インテリアやフレングランスなどを含め全方位的にその世界観を表現していく。DNAやヘリテージを大切にしつつ、そこにベルギー出身の自分らしさ、例えばロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」。ニコラスの語るそんな新生「クレージュ」の第一歩として、20年末にはブランドのアイコンを現代に合わせて再解釈したコレクション“リエディション(REEDITION)”を発表しました。原点に立ち戻り、アーカイブの中から好きなシルエットを選びシンプルにアレンジしたという同コレクションは、71年に発表されたビニールジャケットや72年に発表されたトレンチコート、リブニットなどを豊富なカラーバリエーション(ビニールジャケットは15色展開)と環境に配慮した素材で仕上げられました。このコレクションからも彼がクレージュのDNAやヘリテージを常に考えつつ、新たなアプローチを模索していることがわかります。
(参照:Vogue France, 10 things to know about Nicolas Di Felice, the new man at Courrèges, LIAM FREEMAN, 4 Mar. 2021, https://www.vogue.fr/fashion/article/nicolas-di-felice-courreges-first-collection-fall-winter-2021-2022)
「I can feel your heartbeat」と題されたコレクション映像は、パリ郊外のオーベルヴィリエにあるカウンターカルチャーの中心地 La Station -Gare des Minesで撮影されました。白一色の会場の壁沿いをモデルがウォーキングし、ファーストルックとして1963年のチェック柄を再現したというビッグコートが登場しました。クレージュがきっかけとなり60年代を代表する世界的なブームとなったミニ・ルック。ブランドを象徴とするミニスカートやパンタロンは本コレクションでも健在しています。トラペーズドレスやアウターの中に着込んだジャージのスタイリングなどはロゴがなくともクレージュと認識できるほど明白で、トラッカージャケットやボンバージャケット、ファイブポケットパンツやTシャツなどにもクレージュらしさが随所に散りばめられています。ベースはミニマルで、デビューに先駆けて昨年末に発表したアーカイヴコレクション「REEDITION」を引き継いでいます。クレージュらしさを残しつつデ・フェリーチェが解釈するモダンなツイストが加わり、新たなチャプターが始まった21年秋冬コレクション。ショーの最後はドローンが上空へズームアウトし、会場が屋外に設置された真っ白な吹き抜けのボックスであることが判明します。白い壁の縁には歩いたり寛ぐ人、そしてブランドロゴをよじ登る人が見受けられます。コレクションはデ・フェリーチェが若き日のアンドレ・クレージュにリスペクトを込め、若い世代に送った「青春への頌歌(しょうか)」だといいます。
(参照:Fashion snap, 新ディレクターが読み解くフューチャリスティック&スポーティーの現在形:クレージュ 21年AW, 4 Mar 2021, https://www.fashionsnap.com/article/courreges-21aw/)
WILLWORKS0135