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フランス語で “凱旋” を意味する “Triomphe(トリオンフ)” は、パリにある凱旋門を囲むチェーンから着想を得て作られたCELINEの伝統的なモチーフ。2019年からクリエイティブディレクターに就任したHedi Slimane(エディ・スリマン)手掛ける新生CELINEの代表作であり、今のCELINEのアイコンともいえる存在です。今回は、セリーヌの”トリオンフ”について見ていきます。
誕生したきっかけは、1972年にメゾン創業者であるセリーヌ・ヴィピアナの車が、パリ中心のエトワール広場で故障したときのことで、偶然目にとまった凱旋門を囲む鎖のデザインを見て、トリオンフ(フランス語で「凱旋」の意味)をブランドの象徴にすると決心したのがきっかけだったと言います。メゾン・セリーヌのイニシャル・Cが美しく重なり整頓に並ぶブランドの象徴はこうして誕生しました。
(参照:DESIGNER VINTAGE, The classic Celine Triomphe in refreshing canvas, 14 August 2020, https://www.designer-vintage.com/en/stories/classic-celine-triomphe-refreshing-canvas)
メゾンの頭文字である「C」が重なるデザインが、創業者の時代を経て再び脚光を浴びるようになったきっかけを作ったのが、エディ・スリマンです。それまでは昔のブランドの象徴とみなされ、多用されなくなった “トリオンフ”を、自身の「セリーヌ」初コレクションで大きくフィーチャーしました。伝統的なモチーフを、モダンに、スタイリッシュに、タイムレスに楽しめる逸品として再構築したのです。新たな魅力を発信し大きな話題をさらいました。
(参照:DESIGNER VINTAGE, The classic Celine Triomphe in refreshing canvas, 14 August 2020, https://www.designer-vintage.com/en/stories/classic-celine-triomphe-refreshing-canvas)
進化を遂げる“トリオンフ”は、エディ・スリマンのチーフデザイナー就任直後3つのデザインが作られました。まず最も定番でアイコニックな“トリオンフ メタリック”、楕円形でモチーフを囲った“マイヨン トリオンフ”、あえて陰影をつけ、ヴィンテージ感を出した“トリオンフ キャンバス”。三者三様の個性を楽しめるデザインとなっています。そして現在では、最初の3つのデザインに加えて、”トリオンフ”を使った様々なデザインが登場しています。
– トリオンフ メタリック
”トリオンフ メタリック”はメタル素材で作られた”トリオンフ”モチーフのことを指します。セリーヌのバッグや財布、靴や様々な小物にワンポイントとして多用されています。
– マイヨン トリオンフ
2020年春夏コレクションで発表された「マイヨン トリオンフ」。70年代に人気を集めていたビブロスシリーズを再解釈した、従来のトリオンフを囲み繋いだようなデザイン。オールド・セリーヌを彷彿とさせる表情は、新しくも懐かしいシンプルでクラシカルな印象。
– トリオンフ キャンバス
CELINE(セリーヌ)の中でもたくさんのアイテムに採用されている、「トリオンフ キャンバス」。影を付けたトリオンフが几帳面に整列し、クラシックな雰囲気を放ちます。”トリオンフ キャンパス”には、新しくより爽やかな”トリオンフ キャンパス ホワイト”も加わりました。ヴィンテージ感の強い従来のキャンバスと比べても、よりクラシカルで軽やかな印象です。
– トリオンフ モノグラム
コットン素材などにデザインされたトリオンフで、はっきりとしたカラーリングがカジュアルな雰囲気を引き立てる「モノグラム」。毎日のプライベートカジュアルスタイルに寄り添う、新しいブランドの立ち位置を確立しています。
- トリオンフ エンボス & テキスタイル
ジェントルなデザインが魅力的なレザーエンボス(型押し)&テキスタイル(刺繍)のトリオンフは、ビジネスシーンにもマッチするフォーマルな印象。伝統的なエッセンシャルコレクションを手にできる、クラシカルなシリーズです。
– トリオンフ エンブロイダリー
“トリオンフ エンブロイダリー”は2020年の秋冬コレクションで発表された、リネン・コットン混のキャンバス地。職人の技術を感じるレトロな織りの美しさと、エレガントなオーラで紳士なスタイルを堪能できます。
(参照:DESIGNER VINTAGE, The classic Celine Triomphe in refreshing canvas, 14 August 2020, https://www.designer-vintage.com/en/stories/classic-celine-triomphe-refreshing-canvas)
セリーヌは1945年にセリーヌ・ヴィピアナと夫のリチャードが自分の子どもたちのためにパリに開いたオーダーメイドの革製子供靴専門店を開いたことからブランドが始まりました。 店の名前はデザインを担当した妻の「CELINE」と名付けられ、パリの革職人の技術を活かした上質の子供靴はパリの上流階級の間で人気となり、子供たちが成長すると共に注文もどんどん増えていきセリーヌは成長軌道に乗っていきます。この革靴はデザイン的に素晴らしいことは言うまでもなく、医学的観点からも計算された安全性の高い靴であり、さらに最高級の皮革を使って一流の革職人が作りあげるというこだわりがありました。 当然これだけのこだわりのある靴作りを行っていると、子供だけではなく、その親である婦人たちもセリーヌに注目するようになります。婦人たちの要望に応えるようにして1959年には婦人靴の分野にも拡大することになったのです。
(参照:REBAG, CELINE 101: A HISTORY, Kotaana R, July 29 2020, https://www.rebag.com/thevault/celine-101-history/)
子供靴と婦人靴で話題を集めたセリーヌは、その後革製品の婦人用アクセサリー、そして婦人服の展開を開始しました。パリの上流階級が顧客だったセリーヌはB.C.B.G.(Bon chic bon genre =良い趣味、良い階層 という意味)の代表格でした。 B.C.B.G. とは 、パリの上流階級的な、シックで趣味の良いファッションやライフスタイルを指す言葉で、1960~70年代にかけて流行り、日本でも「お嬢様ブーム」に乗ってよく聞かれた言葉でした。しかし、時代の変化とともにその概念も廃れ、ブランドも低迷期に入ります。
(参照:REBAG, CELINE 101: A HISTORY, Kotaana R, July 29 2020, https://www.rebag.com/thevault/celine-101-history/)
1987年セリーヌはLVMHの傘下に入ります。1997年にはアメリカ人のマイケル・コースをチーフデザイナーに迎え、実用的なデザインがアメリカでヒットし業績を回復。その後クロエのフィービー・ファイロなどを含むデザイナーを起用し、2019年にはカリスマ的人気のあるエディ・スリマンがその座につきました。
(参照:REBAG, CELINE 101: A HISTORY, Kotaana R, July 29 2020, https://www.rebag.com/thevault/celine-101-history/)
HEDI SLIMANE (エディ・スリマン)は1968年フランス生まれ。細身のジャケットに細身のパンツを合わせるエディ特有のスタイルは、彼が自分が着るために服作りをはじめた10代で既に現れていました。そして、ほぼ無名だった1997年、イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ・オム のアートディレクターに就任します。彼の若々しい感性は老舗メゾンを活性化させ、ファッション界の注目を集めます。2000年にはディオールのメンズのディレクターに就任。 それまでの「ディオール・ムッシュ」という名称を「ディオール・オム」と改め、イメージを一新。スリムなスーツにナロータイというエディのスタイルは熱狂的に支持され、彼は一躍カリスマ的存在になり、ファッションの革命児と呼ばれるようになりました。2019年春夏シーズンよりエディはセリーヌのチーフデザイナーになります。
(参照:AMICA, Hedi Slimane, il direttore creativo che ha cambiato la moda, https://www.amica.it/2021/02/16/hedi-slimane/)
“トリオンフ”の復活の他に、エディが行ったブランド改革の一つがブランドロゴの変更です。「CELINE」のEの上に合ったアクサンデキュ(アクセント符号)がなくなり、全体的に字間が狭まりシャープな印象に変わりました。新たなロゴデザインは、1960年代に作られたオリジナルデザインの復活なのです。また、全世界にある店舗を新たなコンセプトに基づき改装を行い、インスタグラムも過去の作品が削除されました。エディ・スリマンの持つロックなテイストと、ブランドが持つ上品でシックなイメージが融合して復刻された”トリオンフ”を筆頭に、あたらしい時代のフレンチ・シックを生み出すセリーヌに今後も期待が高まります。
(参照:AMICA, Hedi Slimane, il direttore creativo che ha cambiato la moda, https://www.amica.it/2021/02/16/hedi-slimane/)
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