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高級ダウンジャケットブランドの代名詞「モンクレール(MONCLER)」。日本における爆発的ヒットのみならず、スーツにダウンジャケットを合わせる着こなしを浸透させたとも言われ、ファッション業界を常に賑わせてきたブランドです。そしてダウンジャケットというとアウトドアというイメージが強く、ラグジュアリーブランドというイメージはあまり湧かないのが普通ですが、モンクレールの場合は高級ブランドとして市場評価を得ています。そこで今回は、モンクレールのブランドの成り立ち、人気のダウンジャケットの魅力をご紹介していきます。
モンクレールのブランドの始まりは、現在から約70年前、1952年にレネ・ラミヨンとアンドレ・バンサンの2名が、フランスの都市グルノーブル郊外の「モネステ・ド・クレァモン(Monestier de Clermont)」にて創業します。ブランド名のMONCLER(モンクレール)は、創業地の「モネステ・ド・クレァモン(Monestier de Clermont)」の頭文字「Mon」と「Cler」を組み合わせた造語から付けられました。創業当初は、登山家のためのテントやシュラフ(寝袋)などの登山用装備や、それに伴う衣類を手がけていましたが、地元グルノーブル出身の著名な登山家リオネル・テレイとの出会いがモンクレールのターニングポイントとなります。モンクレールはリオネル・テレイをアドバイザーに迎え、登山家の為の機能性にこだわった防寒着の開発に着手します。軽く、動きやすく、防寒性に優れた機能を併せ持つ防寒着の開発には、当時スタッフが工場で使用していたシュラフ(寝袋)がヒントになったと言われています。そしてそれにより、現在のモンクレールの代名詞であるダウンジャケットが誕生したのです。その後、モンクレールは、1954年のイタリア・カラコルム登頂隊、1955年のフランス・マカル登頂隊、1964年のアメリカ・アラスカ遠征隊にモンクレール製品を提供し、世界中の登山家や冒険家から認知されていくこととなります。
(参照: MONCLER, HISTORY, https://www.monclergroup.com/en/group/history)
その後モンクレールの次なるターニングポイントがありました。数々のメディアでの露出などブランディングに成功した結果、1968年のグルノーブル冬季オリンピックにおいてフランスのスキーチームの公式メーカーとなったのです。このオリンピックをきっかけに、フランスの国鳥である「オンドリ」がモンクレールのシンボルマークとなり、商標として使われるようになりました。配色には「赤・青・白」のトリコロールカラーが選ばれ、一目でフランスブランドとわかるアイコニックなロゴが改めて世界中に認知されていくこととなります。
(参照: MONCLER, HISTORY, https://www.monclergroup.com/en/group/history)
2000年代に入ると、アウトドアブランドというイメージからラグジュアリーブランド、ラグジュアリーアウトドアブランドへとイメージの転換をしていきます。 2004年からジュンヤワタナベ、2005年にはバレンシアガといったラグジュアリーブランドとのコラボレーションを行い、特有のボリューム感が出てしてしまうダウンジャケットをタイトできれいなシルエットに見えるようにデザインし、カラー、素材などをよりモダンなものへとシフトチェンジを図りました。 さらにはガムルージュというレディース最高級ラインも登場し、後にヴァレンティノのクリエイティブ・ディレクターを務めたアレッサンドロ・ファキネッティやジャンバティスタ・ヴァリがデザインを担当します。メンズはトム・ブラウンを迎えガムブルーをスタートさせました。 その後もsacaiのデザイナー阿部千登勢とのコラボレーションライン「モンクレール グルノーブル」や、visvimのデザイナー中村ヒロキとのコラボレーション「モンクレール ヴイ」など数々の新しいコンセプトを開始しています。
(参照: MONCLER, HISTORY, https://www.monclergroup.com/en/group/history)
モンクレールのダウンは、大きなダウンボールが特徴であるホワイトグースの産毛だけで作られています。 使用しているダウンは最高品質のブランドダウンであり、仏企画協会が最高品質ダウンであることを認めるキャトルフロコン(4Flocons)マークを取得しています。 全てのモンクレールダウンジャケットには、このキャトルフロコンが品質の証として表記されているとともに、重さも的確に決められており、モンクレール職人の長年のモノ作りの経験で、ダウンジャケットの各部位には最適な重さが1gごとに決められています。キャトルフロコン認定をもらうには、フィルパワーや断熱力が、もっとも強いニューダウン(収穫したばかりの真新しいもの)であることが必要です。 このニューダウンは1羽からたった30gしか採取できない非常に希少なもので、キャトルフロコンしか使用しないモンクレールのダウンは限られた数しか生産できない貴重なものです。キャトルフロコンのダウンを使用すれば一定の体積あたりの密度が高いため、保温力に優れ、非常に軽いダウンジャケットが作れます。そこまで質の高くない古いダウンの混ざった3Flocons以下のダウンとは暖かさが断然違います。 モンクレールのダウンは保温性が高いため、真冬でもインナーは薄手のロングTシャツでも可能なほどです。ちなみに2017 AWシーズンから、これまでのキャトルフロコン表記が「DIST」表記に変更となっています。「DIST」とは、DOWN INTEGRITY SYSTEM TRACEABILITYの略で、原材料詳細や産地、生産ルートが明確で徹底された品質管理をしている機関の名称となっています。
(参照: ELLEDECOR, THE STORY OF A FRENCH JACKET EMBRACED IN MILAN THAT WENT GLOBAL, CARLOTTA MARELLI, 05 JAN. 2021, https://www.elledecor.com/it/best-of/a35128805/moncler-history/)
二つ目が機能性と共存したファッション性です。モンクレールのダウンが最高品質のアイテムということはご紹介しましたが、モンクレールの魅力は品質だけに留まりません。その最高品質のダウンは一般的なダウンに比べ保温性が高く、細身でスタイリッシュなシルエットのダウンジャケットの実現を可能にし、それまでのダウンジャケットの野暮ったさは払拭され、現在ではお洒落なファッションアイテムの一つとして認知されています。ダウンジャケットはアウトドアシーンやスポーツシーンのアイテムというイメージを覆したブランドこそこのモンクレールなのです。またそのファッション性の高さから芸能人やファッションアイコンと呼ばれる方々の着用も多く、その着用によりさらにその人気に拍車がかかっています。
アウトドア用品、スポーツ用品のアイテムだったダウンアイテムを、ここまでファッションアイテム、お洒落な物としてその世間の認識を変化させた大きな要因は、モンクレ―ルのラグジュアリーファッションブランドとしてのブランディングの成功が大きいと言えます。世界各国のモンクレールの直営店舗では、一流ブランドが軒を連ねる超一等地に店舗を構え、そのブランドイメージに相応しいラグジュアリーな外装、内装が施された店舗で、一流のサービスのもと販売されています。
(参照: MAMe, MONCLER, 12 MAR. 2018, https://fashion.mam-e.it/moncler/)
これまでも数々のコラボレーションを成功させてきたモンクレールですが、特に成功したのは2017年のヴァージル・アブロー率いるオフホワイトとのコラボレーションです。 その成功をきっかけとして始まったのが、「MONCLER GENIUS(モンクレールジーニアス)」プロジェクト。世界中の才能あふれるデザイナーとコラボレーションして、毎月新しいコレクションを発表するという試みです。 このプロジェクトには、日本の藤原ヒロシや二宮啓をはじめ、ヴァレンティノのピエールパオロ・ピッチョーリ、パームエンジェルスのフランチェスコ・ラガッツィ、ALYXのマシュー・ウィリアムズ、ロエベのジョナサン・アンダーソンなど錚々たるメンバーが参加しています。 ジーニアスラインの大成功により、今までモンクレールに対して興味がなかったユーザーや若者からも支持を集めるブランドへと大きく飛躍しているのです。
(参照:PORTOMONTENEGRO, Moncler brand – the history of the popular fashion giant, https://portomontenegro.com/blog/moncler-brand-history/)
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