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イタリア発のテキスタイル&ヤーンメーカーLoro Piana(ロロ・ピアーナ)は、ビキューナ、ベビー・カシミア、ウールといった素材の最高品質を用いたアパレルウエアを作成、世界中のセレブリティに愛されています。特にこれらの素材を使用したニットウェアは、最上の肌触りの良さで知られています。そこで今回は、究極の素材を使ったロロピアーナの極上のニットがどのように作られているのか、そしてその魅力をお伝えしていきます。
北イタリア・トリヴェーロ出身のロロ・ピアーナ家は1800年代初頭にウールの商いを開始します。1924年にピエトロ・ロロ・ピアーナが現在のロロ・ピアーナ社を設立します。 1941年にはピエトロの甥、フランコが事業を引き継ぎ、終戦後には高級ウールとカシミアのサプライヤーとして国内外のオートクチュール業界で確固たる地位を築きました。1970年代、セルジオ・ロロ・ピアーナとピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナがそのあとを引き継ぎ、ラグジュアリーグッズへの進出や国際的なリテールネットワークの構築を推進しました。今や、ロロ・ピアーナは世界最高のカシミアブランドであり、中国北部とモンゴルに生息する子ヤギから刈り取った特別なベビー・カシミアやアンデスのビキューナ、オーストラリアとニュージーランド原産のエクストラファイン・メリノウール、ミャンマー産のロータス・フラワー・ファイバーをはじめとする極めて貴重な最高級素材を使用しています。ブランドは長きにわたる伝統と最先端のテクノロジーを組み合わせ、目の肥えた顧客に傑出した品質で知られる製品を提供しています。レディ・トゥ・ウェアとアクセサリーからなるコレクションはすべてクラフツマンシップと卓越した技術をもって作られるイタリア製です。
(参照:LVMH, Loro Piana IDENTITY, https://www.lvmh.com/houses/fashion-leather-goods/loro-piana/)
“ザ・ギフト・オブ・キングス(R)”は、オーストラリアとニュージーランドの生産者の協力のもとにロロ・ピアーナが調達する極細の希少なウールで、糸の太さは約12μmと、ベビー・カシミアの糸の約13〜14μmと比較しても大差はありません。オーストラリアとニュージーランドで年間50万tのウールが取り引きされるのに対し、“ザ・ギフト・オブ・キングス(R)”は年間3t程度しか生産することができません。その手触りはカシミアにも劣らない柔らかさをもっています。ファビオ・ダンジェラントニオ(Fabio D’Angelantonio)、ロロ・ピアーナ最高経営責任者は、”“ザ・ギフト・オブ・キングス(R)”はロロ・ピアーナ“至高を求める旅”の成果のひとつであり、この地球とそこから生まれる美への深い尊敬の念を形にしたものだ”とコメントしています。(出典:WWD, ロロ・ピアーナ」が極細の最高級ウールを使用したインスタレーションを開催, Mar 30 2018, https://www.wwdjapan.com/articles/593204)このコメントからも、ロロピアーナの素材に対する強い探究心を垣間見ることができます。
カシミアは、中国やモンゴルの高地に生息するカシミア(ヒルカス)ヤギの下毛からつくられます。寒暖の差が激しい環境に順応するため、カシミアヤギの毛は二層になっていて、ニットのための糸をつくるのにつかわれるのは内側にわずかに生えた柔らかい毛だけ。その採取の手間と生産量の少なさからカシミアは高級素材の代表ともいわれてきました。そんなただでさえ稀少な繊維にさらなる可能性を見出し、ベビー・カシミアと呼ばれる1歳未満のヤギの繊細な毛だけで極上の素材を作ろうとしたのが、現CEOであるピエール・ルイジ ロロ・ピアーナです。そもそもロロ・ピアーナのカシミア製品は、中国北部とモンゴルの最高品質のカシミア原毛のみを使用しています。さらにベビー・カシミアにいたっては、内モンゴルの阿拉善(アラシャン)地区という乾燥地帯のみに生息しています、白毛のカシミア仔ヤギから採取した産毛(アンダーフリース)しか使用しないという徹底ぶりです。しかも採取できるのは、仔ヤギが1歳を迎える前の6月に、自然に抜け落ちるタイミングに限られると言います。成獣のカシミア繊維が15µm(マイクロメートル)なのに対し、ベビー・カシミアは驚異の13.5µm。これこそ、ベビー・カシミアが「究極のカシミア」とされるゆえんなのです。そんな幻の繊維を惜しげもなく使用し、流行に左右されない普遍的なデザインに仕上げたロロ・ピアーナのニットは、まさに時代を超越するタイムレスな逸品と断言できます。
(参照:Pen, 最上質にして超希少、主役級のラグジュアリーなセーター8選。, 飴李花 , Nov 06 2018, https://www.pen-online.jp/feature/fashion/knitknit/1)
ビキューナとはペルーとアルゼンチンの高地に生息する「アンデスの女王」とも呼ばれるラクダ科の小型野生動物です。インカの人々は黄金色の非常に柔らかい毛を持つビキューナを神聖な動物と崇め、その毛から作られる貴重な繊維は王族の衣類に使用されていました。ビキューナは獣毛繊維のなかではもっとも毛が細く、柔らかさがあると言われており、一頭あたりの採れる量は少量、収穫できる時期は2年に一度のためその希少性と高価な面から「神々の繊維」と呼ばれるほどの繊維なのです。1970年代の間に、ビキューナは絶滅の危機に瀕していました。最初はスペインの征服者によって、後には密猟者によって、その上質な毛を目当てに組織的に乱獲されたのが原因です。現在、ビキューナが保護されている背景には、ロロ・ピアーナの活動が大きく貢献しています。1994年に、ロロ・ピアーナはペルー政府支援の下、地元の地域社会と協定を結び、ビキューナの買い付けと加工、テキスタイルと最終製品の形で輸出の独占権を獲得します。農民団体と協力しながら、ビキューナを保護し、地域の人たちが収益を得られる仕組みを作りました。そんなロロ・ピアーナのビキューナで作られるニットを身につけることは、世界最高峰の素材を身につけることであり、極上の着心地を体験することができるのです。
(参照:FORZA STYLE, 神々の繊維「ビキューナ」をご存じですか? ロロ・ピアーナのストール編, Aug 22 2017, https://forzastyle.com/articles/-/51779)
最高級かつ希少な原材料も、それをいかす技術とテクノロジー、感性なしに美しい製品は完成しません。ロロ・ピアーナでは、生産者との強い繋がりをいかして素材への研究を続け、厳しい生産管理のもと、極上のテクスチャーと軽さを備えたニットを生み出しています。原産地とイタリアで丁寧に洗毛したのち、繊維1本1本をほぐして糸をつくります。そしてシーズンごとに色あざやかに糸を染めていくのです。希少な産地と丹念な作業によって生まれる無二の糸。その糸を美しいニットに仕上げるのが、イタリアに息づく職人技、そしてタイムレスな価値あるものを作り出す感性です。
(参照:VOGUE, 10 Things You Need to Know About Loro Piana, KATIE TROTTER, April 23 2020, https://en.vogue.me/fashion/10-things-to-know-loro-piana/)
ルーツを遡れば200年ほど前、19世紀の初頭に毛織物商人として北イタリアでビジネスをスタートしたロロ・ピアーナファミリー。その後、20世紀に入り、高級ウールやカシミアなどに特化したオートクチュールのためのファブリックサプライヤーとしての地位を確立します。80年代に絶滅の危機に瀕していたビキューナを保護するため、ペルーに投資をスタートしたことを皮切りに、中国やアルゼンチンなど、優れた原材料の産地に対して本格的なサポートを始めます。ロロ・ピアーナが世界中を探求して見出し、サポートを続けてきたニットに用いる最高級の素材、例えばビキューナにカシミア、ザ・ギフト・オブ・キングス®という登録商標をもつメリノウール、さらには蓮の茎から作られるロータス・フラワー®。いずれも産地と強い協力関係を築き、現地の人々と一丸となって素材の品質向上とサステナブルな生産体制を探求しています。
(参照:VOGUE, 10 Things You Need to Know About Loro Piana, KATIE TROTTER, April 23 2020, https://en.vogue.me/fashion/10-things-to-know-loro-piana/)
ロロ・ピアーナのニットには、わかりやすいロゴやマークはついていません。最高級の素材を柔らかく、空気を含ませて編み、うっとりするほど快適な着心地を提供するという信念のもとには、ブランド名を強調する必要はないのです。そして、より自然な形で素材のテクスチャーを感じてもらうために、ニットウェアには奇抜なデザインではなく、シンプルで洗練されたデザインが用いられています。ロロ・ピアーナのコレクションにはいつも、着る人に極上の着心地をもたらし、その人の魅力をより引き立てるニットがそろいます。現ロロ・ピアーナ会長のピエール・ルイジ氏はロロ・ピアーナのニット製品について次のように語っています。“ベビーカシミア、ビキューナ、最高級のウールは私たちの活動の要です。そのため、既製のコレクションのアイディアがニットウェアから始まるのは自然なことなのです”(出典: PERMANENT STYLE, BEHIND THE SCENES AT THE LORO PIANA FACTORY, Simon Crompton, Feb 8 2021, https://www.permanentstyle.com/2021/02/behind-the-scenes-at-the-loro-piana-factory.html) 彼の言葉からもわかるように、世界最高のマテリアルを追求し、産地のサポートを含めてサステナブルなブランドのあり方を追求するロロ・ピアーナにとって、それらの素材を使って丁寧に作られたニット製品は、まさに彼らのブランドアイデンティティそのものなのです。
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