アパレル・ライフスタイル業界での転職にまつわる豆知識
アパレル・ライフスタイル業界での
転職にまつわる豆知識
自社ブランドを展開しているアパレル企業にとって、生地選びと仕入れは実際の商品の出来上がりの良し悪しにも関わる大切な業務の一つです。アパレル企業の中には自社で独自のテキスタイル(生地)をデザインする企業もありますが、多くの企業は生地の仕入れ業務を専門に行う担当者が、商品デザインに合った生地を外部から仕入れて商品を製造しています。そこで今回は、具体的にアパレル企業が扱っている生地の種類、そしてどのように生地選びと仕入れを行っているのかをご紹介します。
アパレル企業の取り扱う生地は、大きく2種類に分類されることをご存知ですか?織り方や柄や素材によって違うのは当たり前なのですが、同じ生地でも実は大きく2種類に分かれています。それがプロパー生地とデットストック生地です。そして、それぞれの生地には特徴(メリット・デメリット)があります。
プロパー生地というのは、テキスタイルコンバーター(大手メーカーと協力し、生地の企画から製造加工までを自らのリスクで行う事業者のこと)が中心となって販売をしている生地のことで、定番生地とトレンド生地もこのプロパー生地に含まれます。プロパー生地の定番生地の場合、必要な時にテキスタイルコンバーターに注文をかけると、基本的に常備在庫をしているため即座に希望の生地を入手できます。そのため、定番の商材企画や、資材として使用する際に用いられる生地です。次にトレンド生地ですが、これは主にアパレル向けに展開される生地です。約1年〜2年後洋服となって展開されることを予測された生地を企画し在庫ストックします。そして、販売実績に応じてリピートで在庫を積みます。販売実績が悪くなると、その生地は廃盤となっていきます。そのため、トレンドを常に追いかけるアパレル企業にとっては必要な生地であり、使用している生地の9割はプロパー生地です。このように、プロパー生地とは、今現在テキスタイルコンバーターが実際に販売している生地のことを指します。
デットストック生地というのは、残反やBC反、サンプル生産反のことを言います。これらは、アパレルメーカーに向けてトレンド生地として販売をしていたが、在庫として残ったために、まとめて売り切ってしまうこと、またテスト的に生産してみたが量産にならなかった生地などがあります。また、紡績工場で量産した反物の中に、規定以上の汚れやキズが発生した場合にはB反・C反といった生地となり、正規ルートで販売ができない生地も、デットストック生地として扱われる場合があります。
日本には生地を扱っている会社は何社ぐらいあるのでしょうか。厳密な定義は難しいと思いますが、繊維関連全般でいうと4,000社以上にものぼります。またボタンや、テープなどの副資材のメーカーも合わせると覚えきれないぐらいの数の会社が存在します。その全ての会社と取引することはなかなか難しいので、その中で自社の製品に合う生地、生地メーカーを探すことが重要になります。それではアパレル企業の実際の生地選び、仕入れルートにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
繊維街などにある生地問屋や小売店を回り、目的の生地を足で探すという方法です。最大のメリットは現金買い・小ロットによる気軽さです。また中には、B反と呼ばれる正規反ではないアウトレット商品のようなものもあり破格の価格で売られているものもあります。ただ定番品以外のものだと、いざ量産で使おうとした際に在庫が切れているということもあります。アパレル企業では、量産化がまだ決定していない商品のファーストサンプルを簡単に制作する際や生地の質感などを確認したい場合に、この生地問屋や小売店で生地を選び、小ロット仕入れるという方法がよく使われます。
テキスタイルコンバーターとは、様々な産地(工場)とのパイプを持ち、アパレルメーカーと工場の間に入り、アパレルメーカーの要望などをヒアリングし、工場と擦り合わせながら、生地を作って納品していく会社ないし個人になります。一見すると中間マージンが高くなるのではないかと思われがちですが、コンバーターや商社は様々なアパレルメーカーからの仕事を集約しているため、工場ともスムーズな打ち合わせが可能です。商社やテキスタイルコンバーターを通すことにより、目的の生地を効率良く探すことができ、さらにコストも他の仕入れ方法と比較すると低く抑えることが出来る場合もあります。また商社やテキスタイルコンバーターが扱う生地の中には、自社品番をつけて在庫商品として販売している生地もあり、その中から気に入るものが見つかれば待つことなく生地を手に入れられます。商社、コンバーターごとにも扱える生地の種類に違いがあるので、自社の製品に合う会社を探すことが重要です。
産地(工場)から直接仕入れるという方法は、実際に産地に行って工場の担当者と打ち合わせをして、オリジナルのテキスタイルを制作するということです。他の生地の仕入れ方法と比べると時間やコストがかかってしまう場合が多いですが、こだわった生地ができるのが特徴です。ただ多くの生地の産地(工場)はほとんどホームページを持たないので、人伝てに紹介などで見つけるしかないことと、一から産地(工場)との信頼関係を作っていかなければならないことが難点といえるでしょう。しかし産地(工場)から生地を直接仕入れることのメリットは大きく、世界で一つの生地を作ることができます。また直接取引によって価格も多少は抑えられる可能性もあります。デメリットは、全て買い取りになるため、ある程度のロットを引き取り在庫しなければならないことと、工場を探すのに時間がかかることです。
アパレル企業の仕入れ❘ 4. 海外から仕入れる
海外から生地を仕入れる場合は、海外で開催される生地見本市などでブースを回り希望の生地を探したり、現地の生地屋さんに足を運び直接交渉することにより、圧倒的コストパフォーマンスで生地を仕入れることも可能です。日本に無いような魅力的な生地や、低価格の掘り出し物の生地と出会うこともあります。ただ日本とは品質に対しての規定の違いもあるので、仕入れる場合は自社で仕入れた生地の試験データを取得しなければならない場合もあります。また海外仕入れは時間や移動費、通訳を手配する人件費などのコストなどもかかります。
アパレル企業にとって生地選び、仕入れは、自社商品の質に関わる重要な業務の一つです。今回ご紹介したように、アパレル企業の生地選び、仕入れ方法には様々な方法があり、目的の生地に合わせて適切な仕入先や仕入れ方法を選択する必要があります。
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