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イタリアを代表する世界的なラグジュアリーブランドである、FENDI(フェンディ)から1997年に登場したハンドバッグBaguette(バゲット)。フランスパンのバゲットのように、小脇に抱えて持つことができることから、その名が付けられたFENDIが誇る名作の1つです。小ぶりでシンプルなハンドバッグであること、そして多くのセレブリティが愛用したことから、Baguetteは大きな注目を集めました。登場から約20年経ち、FENDIのアイコンであるBaguetteは、さらに進化を経て今再び注目を集めています。今回はそんなFENDIについて、そしてFENDI のBaguetteの魅力についてご紹介していきます。
1925年、若きエドアルド&アデーレ・フェンディ夫妻によって、イタリア・ローマにファー工房を併設した皮革小物店としてオープンしたFENDI。女性のテイストとニーズの変化を先取りしたデザインや技術は瞬く間に評判となり、1940年代にはファッション業界に革命的な変化をもたらしました。その立役者となったのが、創業者夫妻の5人の娘たちであるパオラ、アンナ、フランカ、カルラ、アルダでした。学業を終えてビジネスに従事した彼女たちは、フェンディの知名度を首都ローマで確固たるものにしていきます。
1965年、当時まだ若手だったKarl Lagerfeld(カール・ラガーフェルド)をファーのデザイナーに抜擢します。重厚で高級なステータスのシンボルであったファーのイメージを刷新し、従来使用されていなかったレザーやファッションの概念を積極的に取り入れていきます。こうしてソフトで着心地がよく、取り扱いのしやすい新種のファーが登場しました。同時に、なめしや加工技術、象眼細工のようにファーをはめ込むインレーの工夫なども進化し、FENDI=ファーという、誰にも真似ることのできないクラフトマンシップのシンボルが完成します。メゾンのアイコン「FF」ロゴがデザインされたのもこのころで、1977年にはレディースのトータルウェアコレクションもスタートします。1980年代には、ファーの加工技術がさらに発達し、リバーシブルのグレインド・レザーやライニングを使用しないファーの合成技術を開発します。1990年代には、シルクやカシミヤ、ウールなど、他の高級素材とファーを組み合わせた創作的なコレクションも登場します。さらに昨今では、プラスチック素材を用いた未来的なファーや毛先に24金のゴールド分子を刷り込んだファーなど、テクノロジーを駆使した素材も積極的に用いています。2015-16年秋冬には、パリ・オートクチュールコレクションに初参加し、カール・ラガーフェルドの就任50周年を記念して、ファーのみで構成された贅沢な「オートフリュール」コレクションがお披露目されました。ファー業界のスタンダードを築いたメゾンのスピリットを大切にしながらも、その伝統や技術は今もなおさらなる進化を遂げています。Karl Lagerfeld亡き後、長年彼の右腕としてFENDIを支えていた創業家の三代目Silvia Venturini Fendiがメンズウェアを担当し、DIORのメンズウェアを手掛けるKim jones(キム・ジョーンズ)がウィメンズウェアを担当しています。
(参照:InStyle, Everything You’ve Ever Wanted to Know About Fendi’s Fascinating History, Hedy Phillips, Nov 27, 2020, https://www.instyle.com/fashion/history-of-fendi)
現在メンズウェアのデザインを担当するSilvia Fendi(シルヴィア・フェンディ)は創業家の3代目にあたる人物です。1987年にFENDISSIMEラインのクリエイティヴ ディレクターに就任し、94年にレザーグッズの責任者に就任します。そして97年に伝説となるFENDIのアイコンバッグBaguetteを発表します。またその後彼女がデザインしたバッグ“ピーカブー”や“バイ ザ ウェイ”も後にBaguette と並んでFENDIの代名詞となり、人気を集めます。発売から今日までの約20年の間に、1000種類以上が発売されるBaguetteの中には、マーケティングとは無関係に、純粋に芸術的なバッグを作りたい、というシルヴィアの熱い思いから生まれたアートピースのような逸品も多く存在します。シルヴィアは自身のデザインしたBaguetteバッグについてこう語っています。”今日のバゲットには新しいアイデンティティがあります。バゲットは決してあなたの側を離れることのない親友のような存在であるために、時代の変化とともにそのデザインや形を変化させ、新しいアイデンティティと表現を取り入れています。それらはすべてFENDIのDNAを体現しているのです。” (出典:Forbes, How Fendi Is Updating The Image Of Its Iconic Baguette Bag, Barry Samaha, Feb 14, 2019
彼女のこの言葉からもわかるように、その登場から20年以上が経つFENDIのBaguetteが今も人々の目を離さないのは、BaguetteがFENDIのDNAとして時代の変化や人々の生活の変化に応じて、その形やデザインを自在に変化させ、新たなアイデンティティを体現しているからだといえるでしょう。
(参照: Forbes, How Fendi Is Updating The Image Of Its Iconic Baguette Bag, Barry Samaha, Feb 14, 2019, https://www.forbes.com/sites/barrysamaha/2019/02/14/how-fendi-is-updating-the-image-of-its-iconic-baguette-bag/)
女性デザイナーの強みのひとつといえば、自身のニーズやライフスタイルをクリエーションに反映させられることでしょう。当時の’技術的でミニマル’という風潮を取り入れたバッグを考えたシルヴィアの感性が、まだ短いストラップが珍しかった当時、両手が自由に使えて動きやすい、フランスパンのバゲットのように小脇に抱えて持つことができるBaguetteを生み出したのです。標準のBaguetteのサイズはコンパクトながら必需品が全て収まる26 X 14センチ、ハンドルは43〜31センチで、友人との買い物や、よりエレガントな夜のシチュエーションにも見事にマッチし、簡単に持ち運ぶのに最適なデザインでした。時代が変化するにつれて、Baguetteのサイズバリエーションには、ミディアム、スモール、ナノ、そして今ではピコバージョンが加わりました。そしてサイズだけでなく、機能面でも変化を遂げており、初代の発表時は腕を通せる長さのショルダーストラップだったのが、今はハンドバッグのようにエレガントに持てる短めの丈に変身しました。また、よりカジュアルな雰囲気を演出できる、クロスボディ用の幅広ストラップも付属しています。時流に合わせ絶え間なく変化を繰り返しているからこそ、Baguetteはタイムレスなアイコンバッグとして君臨できるのです。
(参照:nssgclub, Fendi Baguette: history of a fashion icon, Benedetta Curti, April 16th, 2021, https://www.nssgclub.com/en/fashion/25983/baguette-bag-fendi-fashion-icon)
モードな佇まいに、遊び心あるデザイン、そしていつも傍に置きたい実用性を兼ね備えたFENDIのBaguette。エレガントからストリートスタイルにまでマッチする、人々がバッグに求めるすべての要素が凝縮されたBaguetteは、時代を超えてあらゆるセレブたちに愛されてきました。永遠のファッションアイコン、テレビドラマSATC(セックス・アンド・ザ・シティ)のキャリー・ブラッドショーもそんな多才なバッグに魅了されたひとりでした。彼女がドラマの中で放った「This is not a bag, it’s a Baguette!(ただのバッグじゃないの、“バゲット”よ!)」は、モード史に永遠に輝く名台詞となりました。Baguetteを世に広めた立役者である、SATCのキャリー役を務めた女優のサラ・ジェシカ・パーカーは、レッドカーペットでも傍らにBaguetteを携え、Baguetteのキャンペーンムービーにも登場し、そして2019年にはSATCで彼女が持っていたヴィンテージBaguetteの復刻も話題になりました。また自由な感性を持つ歌手のレディーガガや、人気女優リリー・コリンズ、ゾーイ・クラヴィッツなどもBaguetteの愛用者で、自分の個性やスタイルをバゲットに託して表現しているのが印象的です。
(参照: newfashion, Success story: Fendi Baguette Bag, 05 03 2021, https://www.mnggo.net/article/success-story-fendi-baguette-bag,7386.html)
今までに発表されたデザインは、なんと1000にも上るBaguette。これほどまでに多くのデザインが生まれているバッグは、FENDIのメゾン内はもちろんモード界でも多くはないでしょう。その背景には、FENDIの美しきイタリアの伝統と技へのオマージュと、希代の才能を持ったアーティスト、クリエーターへのリスペクトが根底にあるのです。歴代のコラボレーションで特に話題になったもののひとつは、1997年から2005年に行われた、イタリアのフェレンツェを拠点とする伝統織物の財団「Fondazione Arte della Seta Lisio」とのプロジェクトです。ルネサンス時代にまでさかのぼる伝統的な技術により製造されたベルベットやブロケード、シルクなどの豪華な織物素材は、官能的な手触りですらあったそうです。またBaguette誕生15周年にあたりアニバーサリーブックも発表された2012年には、リチャード・プリンスやKAWSとのコラボレーションも果たしました。環境保護に役立つべく、ファッション界とアート界の絆を高めたとして、多くの注目を集めました。そして2020年、FENDIはイタリアがもつ比類なき技術への感謝を称えるため、イタリア全土の職人たちとのパートナーシッププロジェクト「ハンド・イン・ハンド」をスタートさせました。タイトルには職人の手仕事へのオマージュと、「手を取り合って」というメッセージが込められています。それらのBaguetteはもはや単なるバッグではなく、まるでアートピースのように精巧で華やかな美しさを放っており、イタリアが育んできた物作りへの情熱がふんだんにちりばめられました。そんなBaguetteが私たちに提供するのは、毎日をおしゃれに彩るバッグとしての役割だけではないのです。類稀なる職人の技術を伝承し、クリエーターが夢を描いたBaguetteを使って、私たちはそれぞれのアイデンティティを表現するのです。色、柄、デザイン、サイズ、テキスタイなどの数えきれないほどのバリエーションを誇るFENDIのBaguetteには、持った人の個性を引き出す魅力が詰まっているのです。
(参照: VOGUE, フェンディのアイコンバッグ、特別な「バゲット」に出会えるエキシビションを開催。, MARCH 22, 2021, https://www.vogue.co.jp/special-feature/2021-03/22/fendi)
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