アパレル・ライフスタイル業界での転職にまつわる豆知識
アパレル・ライフスタイル業界での
転職にまつわる豆知識
2020年9月9日、「販売スタッフの未来は?」と題して、ウェビナーが開催されました。ウェビナーを企画したのは、ファッション業界で働く、または働きたいと考えている方々のキャリアの支援をする株式会社WILLWORKS。多くの方々の転職支援をする中で、コロナ禍で、この業界にとっては暗いニュースが続いている昨今、将来についてご不安の声をお聞きすることも多くなりました。今回、アパレル業界で働いた経験から自身の夢を叶えた新井夫妻をお迎えし、考え方や行動をシェアすることで、ファッション業界で働くことの意義や価値を認識し、未来を描く行動のヒントを登壇者、参加者全員で考える機会となりました。
ハッとするような研ぎ澄まされた空間。ウエアやフレグランス、生活雑貨などが整然と並ぶお店のVTRからウェビナーが始まりました。紹介されたのは、今回ゲストスピーカー新井 克弥、結衣夫妻が群馬県桐生市にて立ち上げたセレクトショップ「HEIRLOOM(エアルーム)」の店内。
八木恵子さん(以下、八木さん):奥様の結衣さんから見て夫の克也さんはどんな方ですか?反対に克也さんから見て妻の結衣さんは?
新井結衣さん(以下、結衣さん):仕事に対してまっすぐで一日中仕事をしている人です。
新井克也さん(以下、克也さん):感覚的なことも含めて僕に持っていないものを持っている。細かいところまでキッチリやってくれるので助かっています。
八木さん:頼りになる存在なんですね。お二人とも株式会社トゥモローランドに新卒で入社されたんですよね。
克也さん:体育系の大学出身で、製薬会社などから内定もありましたが、どこかしっくりこない自分がいて。「サラリーマンとしてやっていきたいのか?」という疑問がありました。両親祖父母が自営業でレディースセレクトショップをやっていることもあり、せっかくなら自分が一番興味のある洋服屋を受けてみようと思い、当時一番興味を抱いたトゥモローランドを受けました。雰囲気がよさそうだと思ったのと、将来を見据えて30代40代でも着ていたい服を扱っている会社がよかったので。
結衣さん:自分が楽しめる会社がいいと思っていました。他業種もエントリーしましたが、その中でもトゥモローランドは内定をもらって縁を感じ、直観で決めました。
八木さん お二人とも20代のころから将来のことを見据えつつ、最後は直観で決めるという。さすがご夫婦、似ていらっしゃいますね。
今のキャリアに関わるアパレル業界で得た大きな経験とは。今のキャリアに関わるアパレル業界で得た大きな経験とは。今のキャリアに関わるアパレル業界で得た大きな経験とは。
八木さん:トゥモローランドに入社されてから、どのようなご経験をされましたか?
克也さん:いずれレディースブランドを扱う仕事につきたいと面接で話していたので、初めの配属はレディースでした。会社として初めて男性がレディースブランドに配属されました。
八木さん:壁にぶつかることはありましたか?
克也さん:女性の世界で働く環境で失敗ばかりでした。上司からは「気がきかない」「売れない」などいろいろ言われ。(笑)
八木さん:どうやって乗り越えたんですか?
克也さん:いずれは自分で店をやりたいという大きい目標があったので、その目標があったからやれました。目標が無かったら辞めていたかもしれません。
八木さん:仕事をする中で、印象的な上司のアドバイスはありましたか?
克也さん:僕は男性的な接客というか、商品説明から入るような、言うならば自己満足な接客が続いていたようで。上司から、特に女性のお客様は「共感することを求めている」などアドバイスをいただきました。それを実践すると、ちょっとずつコツを掴めてきました。
八木さん:女性の上司からの指示は受け入れづらくなかったですか?
克也さん:ひたすら耐えるしか…(笑)。目標に向かって、そこに行きつくために何をすべきかを考えるうちに対応力がつきました。その当時レディース雑貨のレイアウトや売上げ担当にもついていて、ウエアに比べるとバッグやシューズは男性でも持つものなので、わかりやすかったです。
八木さん:成功事例はありますか?
克也さん:販売計画を練るのが好きだったので、雑貨のメイン担当にさせていただきました。ルミネ横浜店では、3万円台前半のバックが売れ筋だったのですが、在庫不足のことも考えて、4万円代のバックを戦略商品として販促を仕掛けてみました。他店から在庫を集めたりして。これがたまたま当たりまして、全国で一番売れるという状況になった経験があります。
八木:さん:当時、克也さんがスゴイといううわさは社内でもありましたか?
結衣さん:・・・いえ、私は聞かなかったです。(笑)
八木さん:どこからバッグの戦略がでてきたんですか?
克也さん:3万円台バッグの在庫がなくなって売るものがなくなるという他店と同じ状況を見越して。2~3か月先を見て計画することを意識していました。
八木さん:販売員時代に楽しかったことはありますか?
結衣さん:つらいことも多かったので(笑)。でも、お客様の顔を見られることや、お客様が心を開いて楽しいと感じてくださると私も楽しくなりました。周りの仲間にも恵まれていました。
八木:販売員の時はお客様に助けられるときがありますよね。克也さんは本社勤務もされたんですよね?
克也さん:はい。ヘルプなどで他店の雑貨レイアウトを見ていただいたのか、あるとき営業部長から本社で何かやってみないか声をかけていただいて、ディストリビューター職で本社への異動が決まりました。2年間やりましたが、この時も苦労しました。細かい数字を扱う仕事が苦手で貢献できず、お店へ戻ってみるかという話も出ました。その時、別の部署からたまたま生産の仕事をやってみないかと声をかけてもらったんです。
八木さん:ディストリビューター時代の克也さんはどうでしたか?
結衣さん:物静かで。家でも声をかけられない程の暗さでした。(笑)
克也さん:生産の仕事は楽しいこと続きで。はじめは生産という仕事は何をやっているのかも知らない状態でしたが。実際やってみると今までやってきたことと全く違って、社外の工場長とやり取りすることも多くなって、洋服の細かい仕様や、洋服の本当の価値を知ることができたことが大きな経験になったと思います。
八木さん:物の良し悪しがわかって今に活きているんでしょうね。結衣さんは克也さんに商品のことを聞きますか?
結衣さん:私が知らないことも多いので、よく聞きます。製品の洗い方なんかも。商品の知識があって助かります。
八木さん:もののことがわかると信頼されますよね。
克也さん:販売員時代の経験が、今、すべて活きています。電球交換や店舗のラック付け、植物の手入れやストック整理も。
八木さん:お仕事で大切にされていることはありますか?
結衣さん:一番は自分が楽しめるかどうか。周りの人達に影響することだと思うので。今もそうです。
克也さん:入社して3年間、まずは言われたことをしっかりやるようにしていました。その基礎が今も活きています。
八木さん:お二人は、現在、販売もされているわけですが、販売スタッフの役割とは?
結衣さん:2歳の娘がいるので環境の変化はありましたが、それをふまえてお客様と接することができるようになりました。今も昔も変わらず、販売という仕事は、作り手とお客様をつなぐ役割、そして身に着けるものを通じて楽しませる役割だと思います。
克也さん:良い生活には心地よい刺激が必要だと思っていて。お客様が知らなかったものを紹介してお客様の生活にちょっと刺激を与えることが役割じゃないかなと思っています。
八木さん:洋服屋さんの存在意義はどんなところだと思いますか?
結衣さん:洋服は絶対に必要なものではないですが、モチベーションに重要な働きがあって、みなさんの気持ちをあげていく希望の場所でありたいです。
克也さん:せっかく着るならちょっと良い服で。いつもの生活の時間のクオリティを上げてさしあげることが洋服屋の存在意義なのかなって思っていて。アナログなやり方ですけど、店舗でお客様と一緒に洋服を楽しむということが存在意義かなと思います。
―新井ご夫妻はなぜ独立開業というキャリアを選ばれたのでしょうか。
克也さん:生産担当として全国を回るうち、自分の地元の群馬県桐生市を織物の街として改めて認識し、それが今の答えにつながったと思います。
結衣さん:結婚をするタイミングで言われていたものの、独立することに私はなかなか納得できず。自営業になることや、地元を離れることに不安がありました。
八木さん:でも、色々考えて独立されたんですね。
克也さん:トゥモローランドでの生産管理の業務を通じて、素材、生地、縫製など、どんどん「ものづくり」の世界にはまっていきました。
八木さん:独立していかがですか。
克也さん:自分が作った空間で、自分たちの好きなものだけを集めて、それに共感してくださるお客様がいること。想いに共感してもらえることに一番喜びを感じています。売上げについては、4月中旬にお店を開けて、5月の連休中はあと二ヶ月でお店がつぶれるんじゃないかということもありました。でも、6月に入ってからは新しいお客様もいらしてくださって。10坪程度の店内なので1日のお客様も限られていますが、自分たちが生活できる範囲の売上げは出てきています。販売員の在り方も、今だからといって変わったことはなくて。ネットで商品が売れるは多くなりましたが、テンプレートでメールを流すだけではなくて、そこに心を通わせるような一言を入れることが大事なんじゃないかなと思います。
結衣さん:写真出お店の雰囲気を伝えたり、私たちの雰囲気を伝えたりすることも、お顔の見えないお客様に対して大事かなと思います。
コロナウイルスの影響で思うように転職活動ができない現在、何かやるべきことは?
-参加者様からご質問をいただきました。
質問:いま、コロナウイルスの影響で思うように転職活動ができないのですが、何かやるべきことはありますか?
結衣さん:自分の想いと、雇う側の意思とバランスが取れないこともあるかと思いますが。自分の理想があれば、その理想に向けて努力することが大切だと思います。やって損なことはないので。生産管理でもなんでも良いですし。私は販売の経験だけなので、もっと勉強しておけばよかったと思うことがあるので。ほしい情報は自分で学べば力になると思います。
八木さん:コミュニケーションが大事なので、友人でも家族でもテーマを決めて話したり、聞く力を高めるために質問をたくさんしたりすることもいいですよね。
お二人は生粋のファッション好きで、それをお仕事にされている素敵なご夫妻ですね。目的が明確にあるからこそ、気持ちも行動も追いついてくる。好きなことを仕事にするからこそ長く続き、そして変化し続けていらっしゃいます。みなさまも改めて、ご自信の好きなことは何か、なぜそれが好きなのかを改めて深堀りしてみてはいかがでしょうか。
<イベント詳細>
概要:「販売スタッフの未来は?」~コロナ禍で戦うアパレルの人たち
主催:株式会社WILLWORKS
WILLWORKSのウェビナーとは___
アパレル業界で活躍する人たちに焦点を当て、変化の激しいこの業界において、時代を生き抜くヒントを得たり、自身のキャリアを考えるきかっけにしたりと、みなさまのお仕事にプラスアルファのエッセンスを提供したいという想いからはじまりました。
今回の登壇者
●ゲストスピーカー●
新井 克弥(Arai Katsuya )
2009年株式会社トゥモローランドに入社し横浜店に配属される。その後本社にて、ディストリビューター、生産管理を経験後、2020年に独立し、実家の群馬県にて夫婦でセレクトショップ「HEIRLOOM(エアルーム)」を立ち上げる。
新井 結衣(Arai Yui)
2009年株式会社トゥモローランドに入社し立川店に配属される。その後、二子玉川店、吉祥寺店にて店長職を歴任後、2020年に退社。夫の克弥さんと同ブランドを立ち上げる。
●司会進行●
八木 恵子(Yagi Keiko)
JOURNAL STANDARDやIENAなどのブランドを展開する株式会社ベイクルーズのDeuxieme Classeディレクターとしてブランドの成長に貢献。その後結婚、出産を経て、職場に復帰。現在は同社人事ディレクターとして、グループ全体の人材育成と組織課題の変革に挑戦中。